The TIME is NOW

「The TIME is NOW」 は 源流の郷協議会の会報誌です。

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源流白書


源流の郷は、その多くが分水嶺近くの森林地帯に存在しています。豊かな森林に覆われている源流域は、私達に水やきれいな空気など多くの自然の恵みを与え続けております。それと共に、源流域の自然は私達の生活や文化と密接に関わり、日本人の生き方や自然観にも大きな影響を与えてきました。

ところが、全国各地の源流域では急速な過疎化や少子高齢化が進行しており、源流のまちやむらで生活や文化を維持することが危うくなっています。それに伴い、源流に住む人々だけでは山谷森などの自然を守れない時代を迎えています。

全国源流の郷協議会では、このような源流域の現状を多くの方々と共有するために、以下の皆様に検討委員となって頂き源流白書を作成しました。

  • 高橋 裕(東京大学名誉教授)
  • 宮林 茂幸(東京農業大学教授)
  • 澁澤 寿一(NPO法人樹木・環境ネットワーク理事長)
  • 小田切 徳美(明治大学教授)
  • 金尾 健司(国土交通省水管理・国土保全局河川環境課長)
  • 山田 健(サントリーホールディングス株式会社 チーフスペシャリスト)
  • 大久保 憲一(全国源流の郷協議会員 長野県根羽村長)

※敬称略略、肩書きは当時の物

源流白書は以下で閲覧できます。

源流白書(PDFファイル・30MB)

源流域再生のための4つの提言

平成26年に発行した「源流白書」では、源流の危機は国土の危機ととらえて、次の4項目の提言をしています。

具体的な活動として、国民運動を展開していくために、提言の第1に掲げているように「源流基本法」の制定を目指すこととしています。
かつての生活・文化圏であった流域圏を基本として、国土保全としての流域連携、流域経済圏としての地産地消のシステムづくり、流域の生態系保全のための河川の環境保全の取組を考えていくこと重要であると考えています。

①私たちの共通財産である源流を守ること。100年先の日本の存続に向け「源流基本法」を制定し、国土を守る仕組みを作ること。

背景

源流の人口は減少の一途をたどっており、まさに人が゙消える状況にある。

地方創生が謳われる中で、消滅する町村として名指しされ、一方で農村は消滅しないという論法もある。源流に人が住み続けなければ国土崩壊の危機と考えれが、当然源流から人の暮らしを消すことはできない。

今、若者を中心に農山村回帰の現象全国的に起きているが、それは単にブームだけでは捉えられない価値を見つけることができるからではないだろうか。地方創生を叫ぶならば、その流れを止めることはできない。そして人が暮らしを作ることで、源流の役割をさまざまに果たすことができると考える。

提案

「源流基本法」を制定し、日本の在り方を再確認するとともに、その具現化のための基本となる計画を流域単位で策定し、源流に人が住み続けることができるような仕組みを構築する。そのための短期滞在や体験滞在、そして定住と、移住支援のための財源や制度の充実を求める。

②流域圏の持続的な循環型社会に学び、理想的なシステムを確立すること。

目標

上・中・下「流域」は、古来より河川を通して地縁的な要素を抱合し、歴史や文化、さらに自然的要素にもつなる地域固有の連携圏域である。流域では相互補完的な連携(資源・経済)や、水循環、水環境管理(治水・生態系)の視点からの連携など、さまざまな形でのつながりがあった。

今一度歴史に学びつつ、全国の109の1級水系において、その流域ごとの連携を継承するとともに、上・中・下流のそれぞれの地域が主体となった流域連携組織の全国化を展開する。

提案

「源流基本法」の下に基本計画を流域圏単位で策定し、実施していく。流域連携(流域交流の活性化)の義務化及び策定に対する国の支援体制とそのための財政支援として「(仮称)流域圏交付金」の創設を求める。

③源流文化を広く伝えるために、学びの場を整備する

目標

小学校4・5年生社会科で学習する「森・川」に関する授業について社会において、『源流』の役割は大きく、農業や水産業とともに“林業”の盛んな地域の具体的事例を通して調べ、併せて「源流地域をフィールドにして体験学習を行う」意義は高いと考える。これらより社会科の「森・川」の授業について、下記の提案をしたい。

  • 源流をフィールドにした「体験学習」を取り入れること。
  • 複数日間の環境プログラム等一定の基準を設けた学習の義務付け。

また、大学、企業においても環境プログラム等一定の基準を設けた学習の規則付けを望む。

提案

義務教育課程において「源流学習」の義務化、現行学習指導要領・生きる力への明記を求める。

④国土保全の役割を果たす源流の農林業が、継続するための政策の確立を図ること。

背景

源流地域が担っている国土保全などの公益的機能を守るためには、地域の森林が健全な状態で維持しなければならない。

  • 天然林(環境林)では、良好な植生の維持に影響を与えない範囲で、エコツアーや環境学習など地域資源の利活用が行われている。
  • 人工林(生産林)では、林業生産に伴う「山林の循環」によって地域経済と雇用が維持されてきたが、長期に及ぶ木材価格の下落等から困難な状況となっている。
  • 森林植生や林業体系などは各地で大きく異なっているため、全国一律の補助制度だけでは適正な維持管理はできない。

このため、「山林の循環」を確立させ、環境・経済・資源の循環を目指し、現行制度の抜本的な見直しまたは新たな法整備と、財政支援を行う必要がある。

提案

「源流基本法」の下に基本計画を流域圏単位で策定し、実施していく。併せて、源流域の各市町村独自に、自然特性に適した森林保全や林業施策に活用できる財源として、「(仮称)源流地域保全交付金」の創設を求める。

源流には多くの課題があります。しかしそれは源流だけでなく都市の課題でもあります。地方創生の総合戦略に通じるものでもあると確信しています。みんなで知恵を出し合い、豊かな未来のために行動しましょう!